線維筋痛症


大塚・栄一クリニック
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★線維筋痛症とは★

線維筋痛症は全身に激しい痛みが生じる病気です。その痛みは軽度のものから激痛まであり、耐え難い痛みであることが多く、 疲労感や抑うつ気分、不眠など様々な症状を伴う疾患です。僅かな刺激(爪や髪への刺激、服のこすれ、音、光、温度、湿度の変化など) で激痛が走ることも特徴です。線維筋痛症の病因はまだ明らかになっておらず、一般的な血液検査やレントゲン検査では異常が認められません。 男性より女性に多く、中高年に発生率が高いと言われていますが10代でも発症する方もあり、全年齢層にわたっています。 痛みと疲労感、不眠などにより、患者は日常生活が著しく困難になることもあります。

<どのような症状?>

<痛み>
線維筋痛症の痛みは広範囲かつ慢性的です。体のある部位に思い当たる原因もなく痛みを感じ、やがてその痛みが全身に広がります。 常時激痛が全身を襲い、慢性疼痛の様を呈します。痛みの程度や表現も様々で、ズキズキとする痛み、鈍い痛み、ヒリヒリする痛み、刺すような痛み、 焼けるような痛みなどの訴えが聞かれます。
<疲労感・倦怠感>
痛みがあちこちに広がると同時に疲労感や倦怠感などの症状がでてきます。線維筋痛症の疲労感・倦怠感には個人差があり、 日常生活に困難をきたすほど極度になることがあります。
<こわばり感>
関節や筋肉のこわばり感を感じるのも特徴の一つです。しかしリウマチ性の病気とは違い、 関節のはれや変形のような症状は通常ありません。でもリウマチなどの病気に付随して起こってくることもありますので注意は必要です。
<睡眠障害>
強い痛みのために睡眠が妨げられたり、睡眠が浅く、些細な物音で目が覚めたりすることがあります。 このような睡眠障害があると起床時の爽快感が得られず、疲労感やイライラ感が増し、痛みやこわばり感を強く感じたりします。
<その他の様々な症状>
ひどい痛みの持続や、不眠、他の人にわかってもらえないつらさなどで気分が落ち込んだり 不安が増強したりしてうつ状態に陥ってしまうことがあります。その他頭痛・頭重感、ドライマウスやドライアイ、便秘や下痢など様々な症状が出ることもあります。

<なぜ激しい痛みが生じるのか?>

線維筋痛症の明らかな原因や発症のメカニズムについてはまだよくわかっていません。外傷やストレスがきっかけで脳が外部刺激の処理をミスしてしまい、 実際に受けた刺激の何倍もの刺激を感じてしまうのではないかと考えられています。脳には痛みの信号を伝える機能(アクセル系)と信号を抑える機能(ブレーキ系)が 備わっていますが、通常は痛みを感じない程度の弱い刺激でも痛みを感じることからそれらの機能に障害がおこっているのではないかと考えられているようです。 手術やけがなどの強い身体的ストレスや精神的ストレスストレスなどが発病のきっかけとなり、日常生活での様々な出来事が病気の経過に影響を与えます。

<診断方法は>

線維筋痛症に明確な診断基準はありませんが、現段階では1990年に発表された米国リウマチ学会の分類基準を参考に診断が行われています。 診断の条件としては①体の広範囲の痛みが3カ月以上持続ないし再発性に見られること。②全身に18ヵ所ある圧痛点を4Kgの力で押して11ヵ所以上の痛みがあること、 の2点が挙げられますが、11ヵ所以上なくても専門医の判断で線維筋痛症と診断されることもあります。

<治療方法は>

線維筋痛症は原因が不明であるため根本的な治療法がなく、症状に応じた対症療法がとられ、運動療法や認知行動療法、心理療法に薬物療法などを 組み合わせる多面的アプローチが行われます。でも治療で重要なことは、確実な診断と病気を理解し、受け入れることです。痛みが強い患者さんでは薬物療法によって 痛みを和らげ、睡眠障害やうつ状態など現れている症状に対処しつつ個々に見合った適度な運動(ストレッチなど)を組み合わせながら治療効果を高めていきます。
<運動療法>
運動は痛みを調整する物質を増やすと言われています。運動により血行を改善し、筋肉の代謝を促すようにします。
<認知行動療法>
心理療法の一つで、痛みについての誤った認識を改善させ、日常生活の正しい行動を学習させる療法です。
<心理療法>
線維筋痛症にはかなり心理的・社会的ストレス要因が関係していると言われており、その要因を探り、 感情的な側面や性格的特性に対してアプローチしていきます。
<温熱療法>
温水シャワーや温水プール、入浴、蒸しタオルなどで痛みのあるところを温める方法です。
<薬物療法>
薬の服用によって痛みを和らげたり睡眠障害を助けたりする方法です。最近、国内で線維筋痛症に 適応のある薬が承認され、痛みの軽減に効果を見せていますが効き方には個人差があります。専門医に相談しながら 自分自身に合ったが薬を見つけることが大切です。

線維筋痛症に対しては生活改善も大事な治療の1つです。十分な休息を心がけ、 生活を見直し、ストレスの軽減を図るようにすることも大事です。また、原因不明の激しい痛み が長期間続くようであれば早めに専門医に相談し、適切な治療を受けられることをお勧めします。